本との話 6:古本という「文化」=太平書林とブックススズキ

こんにちは、所英明です。いよいよ年の瀬ですね。

ホントの話、今年は(ぼくとしては、ということですが)とっても忙しい年でした。年齢的にはそろそろリタイア世代なんですが、寝ているヒマがないくらいでした。というのはもちろんウソで、まずは昼夜問わず寝て体力確保に努めていました。寝て食べて、その合間にちょっと仕事と市民活動。そんな年が暮れていきますが、今回は古本屋さんという「暮れゆく文化」(?!)にスポットライトを当ててみようと思います。

■太平書林

店主の坂本さんは、この20年ほどの古本業界の変遷を身をもって体験してこられた方。先代の店主の元で店員として長く働き、2年ほど前に太平書林を引き継ぎました。太平書林は理工系などを除いてほぼオールジャンルを扱う県内有数の古書店です。古書店の“今”についてお聞きしてきました。

初めに簡単に太平書林の現状をまとめておきます。
月曜と木曜は、東京と千葉の各古書組合の市場に仕入れに行く日。ですから月曜日はお店の定休日で、木曜日は千葉の市場から帰った夕方から営業しています。それ以外の日は原則店を開く。つまりは基本休みがなく、定休日も実は働いています。
平日は11時半、土日祝は12時に開店し、夜は9時まで営業。古書の買い取り依頼があれば、主に午前中に行くそうです。これら総てをひとりでこなします。
お店の売上げと、市場での売り買い、そしてお客様からの買い取りが収入源で、仕入れ代金はもちろん、お店の家賃、倉庫代を支払います。
インターネット販売はやらない。時間もないし、リアル書店の経営が根幹で、お店に来てくださるお客様が一番大事、と考えているからです。

実は、既に千葉県全体でも店舗を持っている古書店は数えるほど。しかも跡継ぎはほぼいない。10年後に何店残っているか。これは東京や京都など、ほんの一部を除けば全国的な傾向であるに違いありません。
坂本さんが働き始めた20数年前に比べて、来店者数は半分以下に減ったといいます。当時は柏市内に6~7軒の古書店があったのが、今はほぼ一店でこの状態。来店者の多くは高齢者で、若者は数少ない。何故そうなるのでしょうか。

「本を読む人がどんどん減っていますんで。残っていく古書店はほんの一部でしょうね。今は本当に本が読まれなくなってきた。電車の中でもみんなスマホを見ていますから。」という坂本さんに、ブックオフなどの新古書店やアマゾンについても聞いてみました。

アマゾンの影響の大きさは認めながらも、アマゾンは実際便利で、否定はできない。むしろ、アマゾンの影響を受けているのは太平書林のような旧来の古書店より、小説や漫画を主な商品とする新古書店だろう、ということです。
一方で、「新しくて綺麗な本」の買取に価値を置く新古書店では見向きもされないような本を扱っているのが太平書林なので、ある意味で棲み分けは出来ている、のだそうだ。
今、太平書林を支える客層は、本がなくては困る、というコアな人たちだ。「レコード屋さんみたいな感じだと思えばいい」

新刊書店も厳しくなっている。在庫をたくさん抱えられる大型のチェーン書店か、アマゾンしか存続できない。「本だけじゃないですけれどね。個人経営で物販のお店ってまちにないじゃないですか。」と笑う坂本さん。話が悲観的過ぎて笑うしかない、のかもしれない。

話を聞いているうちに気がついた。すると、過去の名作、名著を手にとる機会がなくなっていく、ということにはならないのだろうか? アマゾンには確かに膨大な新刊本と古書が登録されているのだろうが、検索して一直線にめざす本を手に入れるには便利でも、まちの書店のように、偶然に導かれて、モノとしての本を手に取り、選ぶ、というような体験は望むべくもない。過去の名著は触れられる機会もないまま(電子化もされず)、たった今も破棄されているのだろう。まちの中で孤塁を守る古書店が貴重である所以だ。

■ブックススズキ

kamonかしわインフォメーションセンターの「つながるライブラリー」にも登場したブックススズキの鈴木さん。
ライブラリーはとてもいい試み、と褒める。本を紹介する5人がそれぞれ個性的。それに、かしわインフォメーションセンターのように誰でも来れる場所、開かれた場所でやっていることに意味がある、という。松葉町で、絵本に特化した古書店を経営する鈴木さんに話をお聞きした。

今やインターネットやスマートフォンの時代。
直ぐに情報が得られるネットやスマホの良さはあるけれど、すごく忙しい現代人は、自分が好きなことばかりでつながりがち。子育て世代は子育て世代だけでタコ壺化する。親がそうだし、子どもはもっと、生まれた時からスマホがある時代。

「私は、ネットのない時代の良さは、常に考えるヒマがある、考えながらコミュニケーションをとっていた良さ、だと思うんですよ。会って話すのが当たり前だったから、相手の表情とかも一緒に解釈するんだけれども、今は、見えないところで話が進んでしまう。本当に話したことが相手に伝わっているか分からないままで話が進んでいく。あるいは、見えないから言い易いんだ、っていう空気を肯定している気がする。子どもたちが育っていく過程で、心を育てていく時期を、それでいいのか。思春期の、不安でいっぱい悩む時期に、私たちは人とぶつかったり、人のフリを見て育って来たんだと思うんですよ。」

元々は新刊書店を経営していた鈴木さん。しかし時代は移ろい、まちの本屋の経営は限界に。
そのピンチに、知人から1000冊以上の絵本・児童書を託され、これをチャンスにと一気に子どものための古書店へと業態変換する。

今、広い店内には、トトロが居る木製の小屋や、機関車が置かれる。いずれも知人に託されたり、とある展示会終了後に廃棄されそうだったものを引き取ったりしたものだ。
「どうせやるなら、子どもたちが楽しんで笑顔になる絵本を置きたい。絵本には人生を語っている部分が含まれていることが多いんです。だから、大人にもいい。子どもはあっというまに育ちますから、絵本に触れないで育ったらその時間がもったいない。店内の本は自由に読んでくださいって、当初から言っていたんです。特に三歳未満の子どもは、何でも自分の思ったように行動したいんです。それが成長過程だから。でも、子どもを連れたお母さんはそれを駄目、ダメって、止めなきゃいけないと思って、書店でも図書館でも、とってもストレスなのね。当然なんです。それをこの店では取り払いたかったのね。」

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今回、二つの古書店にお邪魔して話を聞き、まちの書店が文化を担い、子育てを陰ながら支援する様を見せて頂いたように思いました。しかし、いずれも経営としては綱渡りでしょう。

因みに、ぼくも関わっている古本のフリマの「本まっち柏」のような市民活動についてはどう思いますか? と太平書林の坂本さんにお聞きした時、返事は明快でした。

「それは、有難いと思います。むしろどんどんやって下さる方がいい。イベントを目指して他所から来たお客さんが当店にも寄って下さるかもしれないですし、本当は古書店も何店かあった方が集客力が増すんです。回遊して下さる。」

お話を聞いて思いました。新刊書店や古書店、そして市民活動、さらに図書館、インターネットをも含めて、きっと何らかの連携や協力が必要な時代が来ているんだろう、と。
今はきっと、本という文化のサバイバルの時代なんだ、と。

 

■今回登場した古書店

◎太平書林 柏市あけぼの 1-1-3 電話 04-7145-1555
◎ブックススズキ 柏市松葉町5-15-13 電話 04-7132-5870

この記事を書いた人:所英明(ところ ひであき)

元私立大学事務職員。現在は柏市地域支援課の地域づくりコーディネーター及び柏アーバンデザインセンターUDC2のディレクター。「柏おやじ図鑑」(2013~1016)、かしわ子育て応援情報誌「Touch」(2018)の編集も。
いわゆる市民活動として、軒先ブックマーケット「本まっち柏」代表、カシワ読書会主催、柏図書館メイカーズ、柏まちなか図書館、柏まちなかカレッジのスタッフも。
本が好き。猫が好き。楽器が弾け、料理がうまい人に、尊敬の眼差し。精神年齢は三〇代で停止。オトナになることには諦めの境地で。

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