「いつでも、おいでください」

― 鷲野谷へ ―

 東光山醫王寺は室町時代創建の古刹(由緒ある古いお寺)です。本堂の東側には、寅年にだけ御開帳される秘仏のお薬師さま三尊が祀られた薬師堂が建ち、東葛印旛大師霊場の八十八番札所となっています。

 私の父は、東京・巣鴨にある、あの有名な「とげぬき地蔵」のすぐ近くのお寺の住職をしておりました。父が鷲野谷の出身で、こちらの医王寺の住職も兼務しておりましたので、私もお盆やお施餓鬼のある夏休み時分は、こちらで過ごしていました。

 大学時代は東京で仏教を学んでいましたので、仏事があれば鷲野谷の医王寺まで出向き行事を執り行い、また東京へ戻るということをしていました。
当時、こちらは空き寺でしたので、檀家の皆さまから「大学を卒業したら鷲野谷へ来てほしい」と仰っていただいておりました。

 大学卒業後、一年ほどしてから鷲野谷へ移り住みましたが、通うのと住むのとでは大違い。中でも一番驚いたのは、夜道が真っ暗だったことです。わずかな街頭の光だけが頼りで、夜に買いものに行ったら自分の家がどこだかわからなくなってしまう事もありました。夜は蛙の鳴き声で眠れなくなることもありました。

― 地域の方との交流 ―

 小学校の5・6年から、お盆になると父と一緒に鷲野谷地域のそれぞれの家に伺ってお経をあげる「御棚経」をしておりました。

 また、毎月2回地域のお婆ちゃん方のみで行う「おこもり」という「お念仏の会」が、医王寺本堂で開催されており、一緒にお掃除やお念仏を勤めたりしているうちに、地域の方々と自然と親しくなりました。こちらへ来てもう30年になりますので、今はみなさんのお顔はだいたいわかります。

 この地域では、全国的にほとんど行われなくなった「十九夜講」が細々とですが続いています。毎月十九夜の月が昇るのを「観音様の来現」と考え、お寺に女性だけで集まる「月待ち講」のひとつです。お経をとなえたり、食事を共にするのです。最近、貴重な新メンバーが入られたようで嬉しいです。

― 広がる場 ―

 他では、柏市の「あいネット・就労準備支援室」から、お寺でボランティア活動を行う体験プログラムのご依頼があり、ご参加の皆さまに境内をお掃除していただいたり、薬師堂で法話を聞いていただいております。

 また、もう何十年も続いておりますが、手賀西小学校の生徒さんが「まち探検」の授業の中で「お寺の仕事」を学びに来られます。また妻や私が絵本の読み聞かせボランティアとして学校へ伺うこともあります。

  毎年、4月8日のお釈迦様のお誕生日には「花祭り」を行いますが、医王寺では、甘茶かけ体験・紙芝居・クイズ大会などを、お子さん向けの内容もございます。お子さんがお寺に来ることが少なくなっていると思いますので、これを機会に、お寺にも遊びに来ていただきたいと思います。

 薬師堂では、山崎弁栄上人の月命日の、毎月4日午後一時半から、お念仏の会があります。12日はお薬師さまのご縁日で、午後一時からご法話のあと、皆でお経を読んだりお念仏を唱えたりして疫病からのお守りを祈っております。どなたでもご参加いただけますので、ぜひいらしてください。

インタビューされた人

東京都

八木
ヤギ
英哉
エイサイ
プロフィール

浄土宗特任布教師・大本山増上寺布教師

浄土宗醫王寺 住職/瑞眞院 副住職