― なにげない風景 ―
ぜひ見てもらいたい風景があります。私の農園の裏手から利根川の方を眺めると、右手には常磐道とつくばエクスプレス。目下には水田が広がり、目線をあげた先には筑波山が見えます。
私の生まれ育った柏市船戸地域は、谷津田や利根川沿いに水田が広がり台地では畑がありました。暮らす人たちは100パーセント農家です。船戸の農家として私で5代目、子どもの頃は、どこまでも続く田園風景の中を、走り回っていました。
― 人生の道として選択 ―
高校卒業後、農家の長男ですから当たり前のように就農しました。その頃、この地域の風景も変わってきます。国道16号線の開通、工業団地の進出があり、住宅地が増え開発が進むにつれて、農業をやめて勤め人(サラリーマン)になる人がとても増えました。私自身も勤め人を選びましたが、3年ほど勤めていたころ、自分の人生これでいいのか。「農業に戻ろうか」と考えますが、実家の農地は規模が1.5ヘクタールと農業で採算がとれない状況でした。
利根川の調整池が眺めている時に、「この場所を整備すれば農地になる。貸してもらえないか」と、建設省(現・国土交通省)の出張所に何度も頼みに行き、他にも「借りたい」というグループが現れて、ようやく30ヘクタールほど借りられるようになりました。そこから大規模経営農業が始まりました。
― 伝えたい思いがある ―
その後、折々に変化する時代のニーズや国の政策により、様々な困難に直面しましたが、志を同じくする仲間たちと力を合わせ、いつも前向きに取り組んできました。
2004年には地元の農産物直売の場として、「かしわで」をオープンしました。単に農作物を売り買いする場所ではなく、生産者と消費者の交流を深める場として、また農業に関する情報発信基地にしたいという思いをカタチにした施設です。
2016年には、いつでも地元農産物の料理を提供できる、農家レストラン「さんち家」も開設し、今では多くの方々に親しまれ、「千葉県のバイキングの名店ランキング」で、ホテル・レストランを抑えて1位に選ばれました。
今後も、柏の市民の皆さんに、農業の大切さを伝えていけるよう、この船戸の地を中心にいろんなプロジェクトを進めていきたいと思っています。