下田の杜で活動されているNPO法人下田の杜里山フォーラムさんは、敷地内にある旧斎藤家住宅吉峰荘(母屋、古民家、温室、木小屋、古井戸など)、野馬土手(掘)などの歴史的遺産の保全にも努めています。
その保全活動の中から、今回は古民家再生プロジェクトをご紹介します。
2020年から始まったこの事業、古民家を再生したいという目的のもと集まった建築士会柏・我孫子支部の5人の1級建築士会の皆さんと共に活動しています。
修繕作業が完成したら、“下田の杜 体験型博物館”として、昔の農機具などを見て、触って、動かす体験スペースや貴重な資料の展示スペースとして活用していきたいと考えているそうです。
みんなで少しずつ修繕作業を行い、ボロボロだった1階の居間には2022年10月に畳がはいりました。
でも博物館にするには、まだまだ長い道のりが。
この日は、
・居間の障子の張り替え
・2階のふすまと土壁の修繕
・博物館の展示台作成
を行いました。
旧斎藤家住宅吉峰荘 母屋前の庭
みなさん、ご自宅に和室はありますか?
我が家には和室がないので、障子の張り替えは初体験です。
古い障子紙はすでにはがれていたので、障子の桟を綺麗に水拭きするとともに
水分を含ませて、障子紙を貼りやすくします。
次に刷毛で障子紙用の糊を塗り、障子紙を貼っていきます。
糊の分量も紙の貼り方も慣れない手つきで、ぎこちない…。
下田の杜の名人たちは、
「そんなん、チョン、チョン、チョンってして、ピーッてすれば大丈夫よ~」
と、言われますが、チョン、チョン、チョンとピーッの加減がわからない~。
最終的には、「数年たったらまた張り変えるし、ここではそんなことじゃ誰も怒らないから大丈夫」という言葉に安心し、どんどん貼っていくことにします。
チョンチョンとピーッの加減がわかったぞ!と思ったら、張り替え終了。
こういうのって、コツをつかんだ頃に終わってしまうんですよねぇ。
最後に霧吹きで、水分を与えて紙をピン!とさせます。
古民家の中の急な階段を登っていくと2階にも二間、部屋がありました。
ここでは、穴の開いてしまった土壁と浮いてきてしまったふすまを修繕しています。
土壁の修繕に使う材料は、下田の杜の田んぼと畑の土、下田の杜の藁を細かく切って混ぜ合わせたものを密閉し、発酵させます。昨年6月から発酵させ、9月には土の固さ調整の為に藁を足すなど、かなり前から仕込みをされていました。
土壁の修繕にあたり、同じ柏市にある染谷家住宅にも見学に行かれたそうです。
「土壁なんて初めてだから、試行錯誤よ!」といいながら、土壁に修繕用の土を盛っていく手つき、お見事です。
土と藁を発酵させているということなので、発酵臭があるのかと思ったら、全然ありませんでした。
一部の壁には、往年のプロ野球選手が。
これは、これで貴重なものなので、このまま残すそうです。
再び母屋の庭に戻ってみると、宮大工の渡辺さんのご指導のもと、男性陣が展示台作りの真っ最中。
木材同士をつなぐ、ほぞとほぞ穴を作ります。
渡辺さんがノミの使い方の手本を見せて、あとは二人にお任せ。
しかし、しるしのついたところを2ミリ削るという高難度。
ノミが直接コンクリートに触れてしまうと、歯がダメになってしまう為、下に木っ端を敷いて上からトンカチで叩いていきます。
お互いの作業の進行具合を確認しつつ、最後は電動ドリルで組み組み上げました。
作業の途中でお茶休憩です。
お茶やお菓子を食べつつ、他愛もない話をしています。
作業を一緒にするだけでなく、こういった何気ない時間が、人と人の距離感を縮めますよね。
この日は、ミーティングもあったため、残り15分程作業をして活動終了となりました。
さて、1年をかけて下田の杜についてお届けしてきましたが、まち旅かしわの
取材としては今回が最後となります。
取材前は、昔の暮らしを体験できるところなのかな?と思っていましたが、
実際はちょっと違いました。
何か体験しようと意気込まなくても、下田の杜に一歩足を踏み入れたら、
「このお花は何だろう?」「久しぶりにおたまじゃくし見た!」など、五感が刺激を受けます。
そして、下田の杜フォーラムの人たちが、
「コゲラがいるから、見てごらん」「そろそろ、梅が咲くよ」など、声をかけてくれます。
人と人、人と自然の距離が近い場所。それがごく自然で心地よく、ホッとできる場所でした。
もちろん、今回ご紹介した古民家再生プロジェクトなど、積極的に活動に参加することもできます。
参加ご希望の方は、NPO法人下田の杜フォーラム事務局までお問い合わせください。
https://shitadanomori-satoyamaf.org/membership/
下田の杜には、一般開放されている場所と立ち入りを制限している場所があります。
訪れる際には、ルールの順守をお願いいたします。
https://shitadanomori-satoyamaf.org/parkrules/
この貴重な里山がこの先も守られていきますように…。
ありがとうございました。
ーおまけー
張り直した障子もキレイにはめられました。博物館として公開される日が楽しみです。