祝!柏の戦争遺跡「旧陸軍高射砲第二連隊 照空予習室」が国の登録文化財となりましたぁ〜
まぁ、厳密に言うと、「国の登録文化財とするように答申が出た!」ということで、これから登録文化財とするための手続きを踏むのですが・・
ども、発掘隊長です。
第1回の「陸上の道」、第2回の「水上(海上)の道」、そして今回は、柏に残された戦争遺跡を題材に、「空の道」とまでは行かないまでも、舞台は「空」です!
【旧陸軍高射砲第二連隊 照空予習室】
さて、国登録文化財(となることが決まった)旧陸軍高射砲第二連隊照空予習室!
北柏駅の北口から歩いて10分ほどの根戸高野台にあります。
私ごとながら、柏市役所に就職して最初に移り住んだ♪サンジョ〜、ヒトマノ、チ〜サナ、ゲシュク〜♬♫(笑) 今は無き〝柏市役所 根戸職員寮〟のすぐ近くで、いつも前を通っていました。
その頃はまだ「柏市西部消防署 根戸分署」として使われており、消防車が止まっていたのを覚えています。
地域の年配の皆さんは、戦時中からある建物だとご存知でしたが、使われ方については、軍馬が食べる「干し草」を保管する「馬糧庫(ばりょうこ)」と伝えられていました。
ところが、2014(平成26)年に専門の先生に調査をお願いしてみると、「どう見ても、こんな通気性の悪い施設に、干し草を保管したとは思えないよね〜」と。
そして・・・
先生の自らの時間を削った献身的な調査が、地域と文化財関係者の心に火を灯し、そこに吸い寄せられるように訪れた良縁によって、
同種の建物は国内に2つしか現存しておらず、屋上から突き出る角のような2本の支柱が残るのは国内唯一の建物であることが判明したのです!(驚)
さらに調査を進めてみると、この建物の使用方法も次第に分かってきました。
屋上の2本の柱は、測量機器を屋上に持ち上げるためのクレーンの支柱としての役割を果たし、運び込まれた測量機器で、遠くの目標物との距離を測る訓練を行なっていました。
建物の脇の広場には4本の鉄塔があり、それらの鉄塔をつないだワイヤーに模型の飛行機を吊り下げて高射砲を撃つ訓練も行っていました。
そして、建物内部では、天井や壁に張った幕に敵機の映像を映し出して、迎撃するシュミレーションの訓練を・・
まさに、この建物は〝空をつくる建物〟だったのです!
今回、「特殊な用途の旧軍施設の遺構として貴重」として「国の登録文化財にすべき価値がある」と、評価を受けたものです。
この建物の解説動画を柏市教育委員会文化課が作成しています。
1照空予習室及測遠器訓練所(旧西部消防署根戸分署) | 柏市役所 (kashiwa.lg.jp)
また、連隊の敷地を復元した3D C Gもお楽しみください。
2高射砲第2連隊 3DCG(三次元コンピュータグラフィックス)版| 柏市役所 (kashiwa.lg.jp)
【柏飛行場とロケット戦闘機〝秋水〟】
柏市域には太平洋戦争の前から戦中にかけて、軍事施設が数多く整備され、様々な部隊が駐屯しました。
1937(昭和12)年に柏飛行場(現在の柏の葉公園周辺)の建設が決まると、翌1938年(昭和13)年の飛行場完成後には東部第105部隊、続いて高射砲第2連隊(根戸高野台)、第4航空教育隊(十余二・高田)などが移って来ました。
なぜ柏が首都防衛の拠点として選ばれたのか・・
柏への飛行場建設には、「東京から30 km圏」「小金牧のあった広い平坦地」「地元からの熱心な勧誘」などの要因があった言われています。
そして、1941(昭和16)年に始まった太平洋戦争においては、柏は首都防衛を担う重要な拠点、柏飛行場は第一線の飛行場となっていきます。
しかしながら、太平洋戦争末期の1944(昭和19)年になると、高度1万mというこれまでにない高さを飛んでくるB29爆撃機に対しては、それまでの日本の戦闘機では対抗のしようが無くなります。
サイパンから飛び立ったB29が首都東京を目指す際、まずは富士山を目安に内陸に入り、右旋回して東京を目指し、東京を空襲後、利根川を眼下に銚子から太平洋に抜けるルート。
もう一つのルートは、それとは逆に、九十九里浜から利根川を眼下に内陸に入って、柏あたりで、東京がはっきり見えて来ると、左に旋回して東京を目指すのだそうです。
柏はそんな立地でもあったんですね〜。
しかし、九十九里浜や利根川河口付近で、B 29の飛来を確認しても、
柏飛行場から離陸した戦闘機が旋回しながら高度1万mまで上がるには40分近くかかったそうで、迎撃には到底間に合いません。
利根川の河口から柏までの距離は・・・
う〜ん、確か、オーバーナイトハイクで利根川の土手を歩いた時、「海から何km」とかの表示があったような・・?
で、出勤前に見に行ってきました!
新大利根橋を越えたところで「海から91km」(直線距離ならもっと短いのでしょうが)。
B 29の速度は時速570kmらしいので・・、利根川河口からは10分もかからずに柏上空を通過します。
九十九里で、海上から近づいてくる機体を遠目に確認したとしても、・・・まあ、間に合わないですよね〜。
そこで、日本軍が開発に着手したのがロケット戦闘機「秋水(しゅうすい)」。高度1万mまで3分半で到達して、B29を迎撃する計画でした。
実際には開発途中で、実戦配備されることなく終戦を迎えますが、柏飛行場では訓練機「秋草(あきくさ)」での訓練が行われ、燃料庫も準備されていました。
2010(平成22)年に柏の葉地区の「柏ゴルフ場跡地」からその燃料庫が発見されたことは記憶に新しいところです。
※現在はふたたび埋め戻され、「一号近隣公園」内で保存されています。見学はできません。
また、柏の葉地区の燃料庫よりも巨大な花野井地区の燃料庫は、本格稼働に備えて準備された重厚な構造となっていました。
※筒状突起が並ぶ畑は個人の所有地です。また、内部に入ることはできません。
戦争遺跡には、どうしても負のイメージが付き纏いますが、先人たちが必死に開発した現代に繋がる当時の最新の技術を・・、
そして何より、二度と起こしてはいけないという教訓と平和の大切さを、今に伝えてくれています。
当時の建造物、実物だからこそ訴えかけられる力、私たちが感じ取れるメッセージって、あると思いませんか。
〈追記〉
※「旧陸軍高射砲連隊 照空予習室」が、国の文化財に登録されたことを記念して、お祝いの会が開催されます。
◎開催日
2024/2/25(日)
◎時間
13:30-15:10
◎会場
根戸近隣センター
◎住所
根戸467-178
◎イベントURL
https://www.city.kashiwa.lg.jp/bunka/event/kousyahouseremony.html