手賀沼水生生物研究会は2009年から、NEC我孫子事業場で希少種の保全活動に取り組んでいます。
2003年に行われた調査で、事業場内にある4つの池(通称四つ池)に、当時全国で10数カ所しか生息していなかったオオモノサシトンボが生息していることがわかりました。
けれども、ここには特定外来生物のブラックバスとブルーギルが多数生息し、ヤゴが食べられてしまうことで、オオモノサシトンボの絶滅が心配されていました。
そんな中誕生した当会に、外来魚の防除について相談があったのです。
この15年間で本当にさまざまな方法にトライしてきました。
最初は「浮かぶサンクチュアリ」を竹と網でつくり在来種を入れたり、池間にネットを張って魚類の行き来を妨げ、池をひとつずつ外来魚フリーにすることなどを試みました。
しかし、サンクチュアリには、池の想定外の水位上昇で外来魚が入り込み、「外来魚サンクチュアリ」になってしまったり、ネットにゴミが詰まり水質が悪化したり、まさにトライ&エラーの連続でした。
NECとの協働が本格化したのは2011年でした。
生物多様性条約締結国会議が愛知県で行われ(COP10)、採択された世界目標(愛知目標)を受けて、政府は「生物多様性条約国家戦略2010」を策定しましたが、
その中で企業が生物多様性保全に役割を果たすことが期待されました。
四つ池におけるオオモノサシトンボ保全活動はNECによりその具体的な活動と位置づけられ、以来、NECと当会は希少種保全に一緒に取り組んできました。
2015年からはゼニタナゴの増殖と野生復帰をめざす活動も行っています。
2012年に第1回目の池干しを行いましたが、500個ものイシガイが見つかり、貝類を産卵に利用するゼニタナゴの復活が提案されたのです。
利根川水系のゼニタナゴは絶滅したと考えられていますが、一部が研究者によって琵琶湖博物館で継体保存されていました。
これを譲り受けて人工池で殖やしていた別な研究者から譲り受けたのです。
外来魚の完全駆除はむずかしく、最近の異常気象により冠水がたびたび起きるようになった四つ池では実現できていません。
しかし、低密度管理によりオオモノサシトンボの生息は確認できていて、今日では全国で一桁になった生息地のひとつとして重要性はさらに増しています。
ゼニタナゴも2年前から四つ池(天然湧水池)に放流していますが、外来魚や、淡水環境に深刻な影響をもたらすアメリカザリガニなどのため、まだ繁殖は確認できていません。
ひとつの種を絶滅させないための活動は貴重です。同時に、希少種だけの保全はあり得ず、そこに生息する普通種も含め、全体の生息地保全が重要です。
外来生物防除は手間も時間もかかる大変な作業ですが、生息地保全に欠かせず、今もせっせと取り組んでいます。
NECは2023年、環境省が募集する自然共生サイトに早々と手を挙げ、認定されました。生物多様性条約の新目標は「ネイチャー・ポジティブ」(2030年までに生き物の減少を増加に転じる)で、これを実現するには「今環境が保全されていて今後も保全し続ける場所」を増やしていくことが必要です。そうした場所を認定して、支援していきましょうというのが自然共生サイトです。
今後もNECと当会によるトライ&エラーは続くことと思いますが、「保全をやってみて、修正してまたやってみる」ことは大変ではありますが楽しく、意義を感じる活動です。興味をお持ちいただいたら、ぜひ見に来てください。