日曜日の柏駅東口駅前通りは歩行者天国だ。
その日の通りの雰囲気は少し変わっていた。
何かを待ち侘びる様子の人々が道路脇に集まり、ワクワクした様子が窺えた。
その時、駅と反対側の旧水戸街道との交差点に一人の男が現れた。
ぴんと張りつめた空気が駅前通りを走り抜け、通りの雰囲気が一瞬にして変わった。
男は大地から力を貰うかのように暫く直立していたが、やがてゆっくりと舞いだした。
そう、柏の地のエネルギーをその身体で表現するように。
待ち侘びた多くの市民がダンサーの周りに集まるが、結界が張られたように一定の間隔を空け、ある距離からは近づかない。
ダンサーを中心とし、空間、そして市民が作る三重の大きな輪は、ダンサーの舞に合わせてゆっくりと駅へと進んでいった。
これは「アートラインかしわ2008」での一コマです。
(アーカイブ写真はコチラからご覧いただけます→http://kashiwa-art.com/alk08/archive01.html)
駅前通り商店街の「特異日」というプログラムで行われた、ダンサー田中泯さん(今では俳優としての方が有名ですが)の「場踊り」です。
「場踊り」とは、既存の表現方法に囚われない踊りを続けてきた田中泯さんが、特定のステージで踊るのではなく、日常の中にある「場」を感じて即興的に踊るプログラムです。
興味深いのは、観客だけでなくダンサーの田中さんでさえどのような踊りになるのか分からないところ。
「カラダには、人間が人間になるまでの歴史が詰まっているんじゃないかと思う。カラダを感じていくことで、生物本来のあり方を取り戻せるのではないか」という田中さんの究極の身体表現に、見ている人々はなぜか惹きつけられてしまいます。
感動は思いがけない物に出会った時に生まれることがあります。
アートラインかしわは「でくわす」を合言葉に活動を続けていきました。
ショッピングセンターの吹き抜けに10メートルもの巨大な少女やカラフルな作品が出現し、
また、別のショッピングセンターのエントランスの植栽には1メートルを超えるインコが60羽も現れ、ダブルデッキの雨よけの天井は全て絵画になりました。
毎日使うエレベーターに乗ると色鮮やかな絵画の世界が広がり、日曜日の歩行者天国は30人のアーティストのアトリエとなり、30号のキャンバスに描くアーティストと道行く市民の皆さんとの交流の場に変わります。
通りすがりの市民の皆さんからも「これすごいよね、だれかやってるのかな?」「アートラインじゃない?」という声を聞いた時は、本等に市民の皆さんにも私たちの存在が浸透してきたなと嬉しくなりました。
これからもアートに「でくわす」街、思いがけない感動に出会える街、柏を目指して多くのかたに感動をお届けして行きたいと思っています。
今秋の企画も現在着々と進行中です。今年のアートラインかしわでも市民、そして来街者の皆さんが街なかで「えっ」というような作品の展示を予定しています。
お・た・の・し・み・に。
アートラインかしわ 代表 住吉慶太