私は流山市にある江戸川大学現代社会学科の教員をしています。
そこで、「若者の街・柏で開催するアートプロジェクトを、学生にも体験させられないか」と考え、10年ほど前から、アートラインかしわに学生を参加させていただいています。つくばエクスプレスの開業後、江戸川大学の最寄り駅は流山おおたかの森になったため、学生の柏駅利用が激減し、柏を知ってもらう機会もほとんどなくなりました。
大学生が東葛の中心地・柏を素通りするのは、実にもったいないことで、アートラインかしわをきっかけに柏に興味を持ってもらえれば、と考えた次第です。
とはいえ、江戸川大学は芸術系の大学ではありません。
私の所属する現代社会学科の学生は、アートとはまるで無縁の生活をしています。
しかし、アートラインかしわでは、公共の場でのイベントや、一般の方向けのワークショップを実施しています。
こういった部分のお手伝いなら、アートの素養のない学生でもできることに気がつきました。そこで、地域を知るための授業に実習を組み込み、学生にボランティア参加をしてもらう仕組みを作りました。
アートに無縁の学生にもできる仕事として、設営などの準備作業や、撤収、清掃などの作業があります。
歩行者天国などの街路を使ったイベントでは、交通整理や道案内もあります。イベントの効果を測定するため、来場者アンケートや交通量調査を実施したこともありました。
アートラインかしわの展示には、アーティストの指示に従って、一般の人々が分担して大きな作品を制作する、ワークショップ形式の作品があります。
学生たちもこうしたワークショップに入り、慣れない手つきで制作に取り組んだこともありました。
もちろん、アーティストが見事な手腕で最後の仕上げをすることは言うまでもありません。
さまざまな人々を巻き込んでの制作は、制作過程も一つのイベントであり、会話が弾み、盛り上がりを見せます。地域の人々と協力して作品が完成した時の充実感は、日頃の学生生活では得られないもので、学生にも好評でした。これも、学生たちを快く受け入れていただいたおかげであり、柏の皆様の懐の深さには感謝しております。
制作に参加した学生にとって、作品はもちろんですが、イベント参加や人々との関わりも特別な経験になったものと思います。現在はコロナ禍で、学生の参加は中断しておりますが、全国から江戸川大学(流山市)に集まり、やがて巣立っていく学生にとって、柏もまた特別な場所の一つになってもらえれば、と考えています。
(副代表 阿南透)
冒頭写真:淺井裕介「テープ森〜かしわのわ〜」(2011)