柏の生き物2:スズメバチとアシナガバチ

柏マニアNo.
13
小川
オガワ
幸夫
ユキオ

ファーム小川

プロフィール詳細

こんにちは、小川と申します。
柏市で農業をしています。

前回のミツバチに続いてまた今回もハチのお話です。今年のうちの畑にはスズメバチやアシナガバチの巣が100個以上できていますが駆除していません。皆さん聞いたり見たりするとびっくりしますが、このたくさんの蜂は柏市の農業や皆さんの生活にとても関連していて、じつは共存共栄の関係です。柏という街中ではすぐに駆除されてしまうスズメバチやアシナガバチたちですが、なぜ畑で巣を駆除しないのか、今回はスズメバチとアシナガバチについての誤解とその必要性をお話ししたいと思います。

まず蜂というと“刺す”イメージがありますが、スズメバチやアシナガバチは他のハチと同様にこちらから何もしなければ刺してきたりしません。プラプラ飛んでる蜂は人を刺しません。飛んでる蜂はエサを探したり巣に戻る蜂です。また花の蜜を舐めているような食事中の蜂も人を刺しません。(ちなみに狩りをしている虫は幼虫のご飯でハチたちが舐めている蜜はハチ自身のエネルギー補給のご飯です。)蜂が人を刺すのは自分の巣を攻撃された時と、人が手で払ったり握ったりした際に蜂が苦しいとか怖いと思った時だけ。巣があっても放っておけば刺さないのです。7月のこの時期は最初の小さな働き蜂(ワーカー)が生まれている頃です。女王蜂は敵を刺すという気持ちのない蜂ですが、この最初のワーカーたちもまたとても大人しい蜂で普通は刺しません。問題になるのは食糧不足になる秋でハチ同士の戦いでハチがナーバスになっている時期に人間が巣に気づかず近寄った時の事故です。

さて、スズメバチとアシナガバチの種類についてですが、両者はともにスズメバチ科で同じ仲間です。そしてそれぞれ約10種類ほどいます。つまり合わせて約20種類ほどの似たような蜂がいることになります。
それぞれの種類は大きさや模様など見た目の違いがありますが性格も違います。さらに食べるものも巣の場所も繁殖時期も違います。
スズメバチというと皆さん怖がりますが、実は気が荒いのはオオスズメバチやキイロスズメバチであって他のスズメバチはとても大人しいのです。(オオスズメバチやキイロスズメバチですら巣をいじらなければまず刺さないです)
10月頃になるとテレビでスズメバチの危険性を煽るような番組やニュースがしきりに流れるので、スズメバチならなんでも怖がるような偏った世の中になっています。次にスズメバチとアシナガバチの役割ですが、主にたくさんの昆虫を狩りしてくれます。農業ではたくさんの害虫がいますが、それも食べてくれます。昆虫界では食物連鎖の頂点にいる虫なので、もしいなくなればその他の虫が異常に増えて困るのは人間です。
またスズメバチもアシナガバチもミツバチ同様にポリネーター(受粉作業者)でもあります。多くの植物の花の受粉に役立っています。野菜や果物を含めた実のなるものには不可欠な存在なのです。

種類の多いスズメバチとアシナガバチですが、我々の庭や家に巣を作る種類は実は決まってます。軒下や庭木に巣を作るスズメバチは主に性格の大人しいコガタスズメバチばかり。アシナガバチではキアシナガバチとセグロアシナガバチです。
ボランティアで巣の移動や相談を受けているのですが、ほとんどの巣は上記のハチたちです。
スズメバチもアシナガバチも巣は一年限りで必ず居なくなるものです。周りに迷惑かからない場所であればぜひ巣をそのまま見守ってください。巣の場所さえわかれば近寄らなければ良いだけです。ハチを放っておく勇気とハチに対する寛容な気持ちをぜひ持って頂ければと思います。
様々な蜂が柏じゅうを自由に飛び回っているの風景が理想ですね。

この記事を書いた人

慶応大学 環境経済・農業経済

ファーム小川

小川
オガワ
幸夫
ユキオ
プロフィール

南増尾の農家「ファーム小川」代表。

慶應大学経済学部卒業後、農業機械メーカーを経て就農。

野菜と生き物の共生を追求した農業を展開し、完全無農薬栽培を実践。約1.5haの畑で100品目500品種の野菜と果樹を栽培し、市内の直売所やマルシェなどで販売をしている。

農業界の“ムシキング"と呼ばれるほど昆虫を愛し、日本ミツバチの保護にも取り組む。

2018年には著書『農薬に頼らずつくる 虫といっしょに家庭菜園』を発売。

参考サイト

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