こんにちは、所英明です。
ホントの話、このコラムのお話を頂いて嬉しく思っています。何しろご依頼の内容が、本に関連したエッセイを月に一回程度書いて欲しい、ということだったのですから、本好きのぼくとしては渡りに船だったわけです。
この文章はその第1回。以後、お見知り置きの程よろしくお願い申し上げます。
初回なので、簡単に自己紹介を。
都内から小学4年の時に柏へ転居。柏五小に転入しました。
大学を卒業後、とある私立大学の事務職員になり、以降約25年間、主に広報・入試部門で仕事をさせて頂き、大学新聞や入学案内を作成し、受験生の募集等に携わりました。
柏市は二十代後半に一端離れ、都内・千葉県内で暮らしましたが、今から約15年前に実家のある柏に、大学を辞して戻りました。
戻って最初の数年間は(親の介護を除いて言えば)、ネットの古書店を立上げただけで、日なたで微睡む猫のようにのんべんだらりと優雅な「毎日が日曜日」でした。
「柏って、案外いいまちだな。」
改めて住んでみて、ぼくはそう思いました。
駅前は賑やかだし、手賀沼周りには豊かな自然があり、サイクリングなんかすると、ホントに気持ちがいいんだもの。
ぼくは改めて、柏が好きになりました。
そして、好奇心の赴くままに暮らすうちに、人との出会いに恵まれ、いつの間にか忙しく暮らしています。
さて、この連載企画では、そんなある意味で柏市から見れば出戻りのぼくが、柏に暮らして思うこと、本屋さんや図書館等にまつわる話題や、ぼく自身も関わっている「本まっち柏」「柏まちなか図書館」「かしわ図書館メイカーズ」「カシワ読書会」等々の本に関連する市民活動にも触れ、時には取材などもしながら、本を楽しみ、本という文化について考え、本についての情報をみなさまと共有できればと思っています。
併せて、本のコラムですから、本や著者の話題を取り上げて具体的にご紹介もしたい、と思います。
というところで、さっそく第1回はこの方を─ちょっと悲しい話題になりますが─紹介させてください。ぼくにとっては、とても大事な導き手でした。
■加藤典洋(かとうのりひろ)さん(1948-2019) 文芸評論家
『アメリカの影』『敗戦後論』『言語表現法講義』『村上春樹の短編を英語で読む1979~2011』などの著作があります。今年5月16日、肺炎のため逝去されました。
個人的な思い出を記せば、まだ銀座に近藤書店があった1990年代の初頭、2階でじっくりと本棚を眺めているうちにふと手にとった一冊の冒頭に収録されていた『「まさか」と「やれやれ」』というエッセイを立ち読みして、ぼくは驚き、また感心して、その未知の著者を初めて認識しました。
それは村上春樹の小説に特徴的に現れるこのふたつの言葉を深く、思いがけない形で読みほどくことで、村上がその小説を通して何を語っているかをぼくに開示してくれました。ここまで深く読み込むのが批評というものか、と文芸評論そのものにも初めて目を開かれた気がしたものです。
それ以来、ぼくは加藤さんの本は欠かさず買って読むようになったのですが、それだけに、先日突然の訃報に接し、本当に知己を失ったように悲しく思ったものです。
こちらもご参照下さい。
https://allreviews.jp/feature/18 ALL REVIEWS 特集 : 加藤典洋著作への書評https://note.mu/waterplanet/n/nfff5e3e9c409 『戦後的思考』加藤典洋著 講談社文芸文庫版の、東浩紀氏の解説「政治のなかの文学の場所」について。