こんにちは、所英明です。
ホントの話、極端に暑い日が続くかと思うとゲリラ豪雨に翻弄されたり、台風に直撃されて生きた心地もなく眠れぬ夜を過ごしたり、天候のことだけ言っても今年の夏はいささか疲れました。そろそろ落ち着いた時間を持ちたいものです。
■これからの柏市図書館
ところで、みなさんは図書館を利用していますか? そして、柏市の図書館が生まれ変わりに向けて、新たな胎動を始めていることを知っているでしょうか?
そもそも少子高齢化の社会で自治体の財政も厳しさを増し、一方で価値観は多様化する中、図書館も今までのままではなく、変わらざるを得ない時代が来ています。今回は昨年、約半年間にわたり市民も参加して取り組み、まとめられた「図書館のあり方」策定について、ご紹介したいと思います。
■「柏市図書館のあり方」
市では、今年2月に〈学ぶこと(学び)、分かちあうこと(共有)、創りだすこと(創造)を支え、「ひと」と地域を育みます〉を基本理念とする「柏市図書館のあり方」を策定しました。この「あり方」は施設整備の計画ではなく、今後の図書館像や運営の理念・方針等を示したもので、この「あり方」を元に、今年度から具体化のプロセスが始まっています。
そして、理念・方針の「あり方」の策定に市民が深く関わったように、それを具体化するプロセスにも市民参加は欠かせないと思います。と言うより、折角の市の取組みをぜひ市民としても支援したいものですよね。
■「柏市図書館のあり方」策定プロセス
『柏市図書館のあり方』を策定するにあたり、市民参加型のイベントが以下の日程で行われました。
①未来の柏の図書館について語り合おう!(全5回・7月末〜10月上旬)
②柏駅ダブルデッキ・ライブラリーフェス(10月5日、6日の2日間)
③未来の柏の図書館を考えるワークショップ(全4回・10月〜12月)
詳しい説明は省きますが、上記のうちぼくも何回かには参加し、ダブルデッキに出かけて青空の下で図書館について語り合ったり、まち歩きをしたり、未来の図書館について想像を膨らませてストーリーを語ったりしたものです。市は多くの対話の場やワークショップを積み重ね、アンケートやパブリック・コメント等も踏まえて「あり方」をまとめたのですが、その具体化に当たっては何を重要と考えているのか、橋本図書館長、柳川主幹のお二人にお聞きました。
橋本 昨年「あり方」をまとめて、今年からは抽象的な理念・方針が書かれた「あり方」を具体化していこうという時に、限られた予算、狭くて古い施設だから出来ない、ではなくて、他の部署に助けてもらったり、市民や民間の様々な団体と連携したり、今までになかったアイデアを投入したりして、ちょっとずつでも「あり方」に近づき、実現していく年にしたい。そのためには市民との連携は欠かせないと思っています。
柳川 図書館のイメージを変えていきたいですね。図書館は本の提供者、利用者はその受け手、という関係ではなく、これからは一緒に作り上げていくようにしたいですね。
ー 先日、まちなかの「空き」の使い方をテーマにして、とても刺激的な講演を聞いたのですが、その中でも強調されていたのが「当事者たれ!」ということでした。まちなかの空き地活用でも、図書館利用でもある意味同じで、これからはお客さんで良しとせず、利用者もまた当事者として関わっていく。そういう姿勢が大事だ、と感じます。
柳川 図書館も、利用者の皆さんからの、もっと色々、もっと便利に、もっとたくさん、といった、ある意味表面的なニーズに応えるだけでなく、今後の縮小してく社会のなかで、社会教育施設としての地域の図書館がどうあるべきか、しっかりと考える必要があると思います。
ー そういう意味も含めて、まずはしっかりと「あり方」が目指す理念や方針に基づいて皆んなが当事者として関わることが大事だということですね。その中で見えてきたものを、やがて来る時にはしっかりとハードに反映させる、まずはソフトが先でいい。館長が仰ったようにそのスタートの年ですね。
■柏市図書館をめぐる市民の動き
実は、市民の動きは既にいくつかあって、喫茶店や美容室の片隅など、どこにでも小さな図書館があるまちにしようという「柏まちなか図書館」の動きがあり、「あり方」のワークショップに参加した市民の中から柏市の図書館を支援しようと「かしわ図書館メイカーズ」が立ち上がっています。
そして、この秋から「kamonかしわインフォメーションセンター」も、館内に絵本や童話などを置き、親子が気軽に立ち寄り休憩できる憩いのスペースを設けると聞いています。市内に本をめぐる様々な動きが広がりそうです。
■今月の本/著者■河合隼雄さん(かわいはやお・1928-2007)臨床心理学
最初に手に取ったのは確か『無意識の構造』(中公新書)。次に、詩人の谷川俊太郎さんとの対話『魂にメスはいらない』(講談社+α文庫)を読んで、なんと言うのか、河合さんの話を聴く力の深さに感銘を受けます。
以後、 『影の現象学』(講談社学術文庫)、『昔話と日本人の心』(岩波現代文庫)、『中空構造日本の深層』(中公文庫)、『子どもの宇宙』(岩波新書)、『ユング心理学と仏教』(岩波現代文庫)ほか、数々の著書や対談などに親しむようになりますが、その河合さんについて、あの村上春樹さんは「物語というのは人の魂の奥底にある。人の心の一番深い場所にあるから、人と人とを根元でつなぎあわせることができる。僕は小説を書くときにそういう深い場所におりていき、河合先生もクライアントと向かい合うときに深い場所におりていく。僕がそういう深い共感を抱くことができた相手は河合先生しかいませんでした。」という趣旨のことを何度か述べています。
もう一つ印象的なのは、河合さんが座談の席などで連発されるユーモア。駄洒落なんですが、深いところで話を聴き続けるのは大変なこと。きっと、それを相対化するのに必要だったのだろうと思います。
「図書館のあり方」(柏市ホームページ)
http://www.city.kashiwa.lg.jp/soshiki/280700/p046994.html
映画『ニューヨーク公共図書館エクス・リブリス』公式サイト
http://moviola.jp/nypl/aboutthefilm.html
武蔵野プレイス
http://www.musashino.or.jp/place.html
オガール ・プロジェクト(図書館を核にしたまちづくり)
http://ogal.jp
Library of the Year
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/Library_of_the_Year