こんにちは、所英明です。
ホントの話、原稿を書いていた11月の12〜14日は図書館総合展という年に一度の図書館のお祭りのようなイベントが横浜で開催されていました。ぼくも時間を見つけてちょっとだけ覗きに行ったんですよ。
前回は「柏まちなか図書館」についてご紹介しましたが、今回は「知恵の森」と「かしわ図書館メイカーズ」についてご紹介します。
■知恵の森
知恵の森の活動は、もともとは柏まちなかカレッジの山下さんと柏市在住の学芸員・佐々木秀彦さんの出会いから始まりました。4年ほど前のことです。思いは、文化の拠点を駅前につくりたい、ということでした。柏は活気溢れる商業都市ですが、それだけでは足りない。そんな思いのメンバーが集まり、議論が始まりました。
文化の拠点ですから、当然図書館機能は外せません(よね?)。でもそれだけではないのです。その拠点にはどんな機能があるべきなのか。様々なアイデアが話し合われました。また、メンバーで誘いあって、あるいは個々人の旅行のついでに、いろんな図書館やミュージアム等を見学に行ったりもしました。そして構想の全体を名付けたのが「知恵の森」です。つまり、知恵の森は団体の名称というより、メンバーが思い描いた“文化の拠点”の名称だったのです。
2017年11月6日、メンバーは「かしわ知恵の森プロジェクト」の名称で、構想をマスコミ向けにプレスリリースし、市長に『柏駅前に新しい「暮しと文化の拠点」をつくりませんか─ライブラリー・ミュージアム機能を備えた施設づくりの呼びかけ─』なる呼びかけ文を手渡します。いくつかの新聞等に記事が載りましたのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
いわば、バトンを市民から市側に手渡す形でこのプロジェクトは一端役割を終えたのですが、その後、この呼びかけに応えるものだったかどうかはわかりませんが、市は予算をつけて前々回にご紹介した「図書館のあり方」の検討を行います。知恵の森メンバーのうち何人かは引き続き、その「あり方」の検討のワーキングに参加するなどして市の取組みをゆるやかに支援しました。
■かしわ図書館メイカーズ(=カシトショ)
その“検討”が終わった今年4月、検討に参加したメンバーを含んで、新しい市民活動団体「かしわ図書館メイカーズ」が立ち上がりました。若く元気なメンバーが加わり、「図書館のあり方」の“実現”に向けて、市民の視点で支援し、発信していこうと志しています。
カシトショが今後、どのような活動を行うのか。実は、まだ定まっているとは言えません。大枠として、上記のように「図書館のあり方」の実現を、市民の立場から支援していく、ということで動き始めたところです。
柏アーバンデザインセンターUDC2が、不定期で歩行者天国の日曜日に柏駅東口駅前通りで仕掛けている「ストリートパーティー」に、今年の夏はカシトショとして参加し、人工芝の上にストリートライブラリーを展開しました。読み聞かせや紙芝居を行い、併せて生まれ変わろうとしている図書館の動向を発信しました。
今後の活動にご注目頂ければと思います。
■今月の本/著者■村上春樹さん(1949〜)
言わずと知れた、村上さん。今更何をご紹介すればいいのでしょう。という話ではあるのですが、まずは個人的なエピソードを。
1979年『風の歌を聴け』が第22回群像新人文学賞を受賞してデビューしますが、その時デビュー作が載った「群像」をたまたま神保町の三省堂書店で手に取って丸谷才一の選評を読み、「この人はなかなか良さそうだ。単行本が出たら買おう」と思ったことを覚えています。つまり、幸運にもぼくは最初期からの読者になり、彼が作家として成長していく様をリアルタイムで見て来たのです。
しかも、このブログの第一回でご紹介した加藤典洋さんは、最も作家・村上春樹を評価し、たくさんの批評を書いた人で、加藤さんに着目したのも、彼が村上春樹を論じた短文「『まさか』と『やれやれ』」がきっかけでした。第三回で触れた河合隼雄さんは、「村上春樹、河合隼雄に会いに行く」の著書もあるくらいに、例外的に村上さんが信頼していた人物でした。そして、実は前回ご紹介した「赤頭巾ちゃん気をつけて」の作家・庄司薫さんは、デビュー直後の村上さんが先輩作家の中上健次と対談した時に、「ほとんど日本の小説は読まない」という中で、例外的に言及した作家でもありました。本を読む、というのは、こうして網の目のように広がる私的なネットワークを持つ、ということでもあるのでしょうね。
知恵の森「柏駅前に新しい「暮しと文化の拠点」をつくりませんか?」
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