子どものためのプログラミング道場 CoderDojo Kashiwa の物語4:創造性が育まれる場づくりを

柏マニアNo.
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宮島
みやじま
衣瑛
きりえ

株式会社Innovation Power

代表取締役

一般社団法人 CoderDojo Japan

理事

CoderDojo Kashiwa Champion

プロフィール詳細

皆さんこんにちは。CoderDojo Kashiwaの宮島です。
今回は、プログラミングを生業とされている大人のメンターが、プログラミングを学ぶことを通じて育まれる創造性や、教えることを通じて自分自身がどんな学びを得ているのかについてお話します。

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皆さんはじめまして。坂田健一です。仕事は、ゲームを作ったり、アプリ制作、WEBシステム構築などをしています。デザインよりはアルゴリズムやロジック系が得意です。16才の頃にROM BASIC搭載のマイコンと出会い、当時はなにを始めるのにもまずはプログラムを書かないと始められないので、プログラミングを独学で覚えました。コンピューターとのつきあいはそれからです。

柏のメンターをしているうちに、楽しくなって、CoderDojo 南柏を立ち上げました。代表をしています。それ以外にも、流山、松戸など近隣のCoderDojoのメンターもやっています。

こんな光景を想像してみてください。

ある子が、CoderDojoでプログラミングを始めたとします。見よう見まねやメンターのフォローでプログラミングができるようになります。CoderDojo Kashiwaでは、Scratchを使っているので、プログラミングに馴れるのはとても早いです。そして、子ども達は、せっかく作った作品を誰かに見てもらいたいと思うようになります。そういう人向けに、CoderDojo Kashiwaでは、作品発表の時間を設けています。自分の作品を発表してみることで、自分がいいと思って作った物に周りの人からいいと共感を持ってもらえたとしたら、また新たに自分のいいと思うものを作りたいと思うことでしょう。それを重ねることで、自分の気持ちの表れがプログラミングでの作品になります。そんな自己表現を気兼ねなくできる場としてCoderDojoを使ってもらっていると思っています。

たとえば、運動が苦手、楽器もだめ、勉強のやる気スイッチがまだ見つかっていない、そんな子がいたとします。そういう子がプログラミングに出会ったとき、自分にはプログラミングで自分を信用できるようになれる、そんな居場所を作れるように心がけています。

CoderDojo Kashiwa で使っているScratchは、マウスでブロックをドラッグして組み上げるプログラミングツールです。さわり方は簡単なScratchでも、作品として仕上げるのには、計画性や実行段階での確認など、物事の積み上げが必要で、出来上がりを見届けるまでには我慢が必要です。だからこそ、作り上げたときの達成感は良い経験になります。日常や学校の勉強と比べ、短いスパンで達成感や成功体験を積めるのはプログラミングの良い点です。

これらの実感は、学校で行っている勉強の意味を知るチャンスになっていると思います。

子ども達の取り組む姿勢や着眼点、できあがった作品を目の当たりにすると改めて自分の未熟さやこれからの私自身の更なる可能性を再認識させてもらえたりもします。

たとえば、音好きの子どもが、歴代のWindows の起動音と終了音を集め、ボタンを押すとそれぞれが鳴るという作品を作りました。これは、構造としては単純ですが、音から郷愁を誘う部分がありました。音が好きだからこそ、音により人の気持ちが高揚することを知っている作品だったと思います。

創造性とは、なにもないゼロから何かを生み出すことだと言われることが多いと思っています。でも、なにかを生み出すきっかけは元々自分の中にあり、それはこれまでの経験や体験などを元にしているものです。そのきっかけから生まれ出た物が他の人から見たときに新しい体験で今までの経験の中で想像もしえなかったものなのです。つまり、応用や組み合わせから生まれた結果が創造だと思っています。なので、CoderDojo の場でいろいろな経験、体験、実験をしてもらうことが新たな創造につながると思っています。

プログラマーの役割の一つに、通訳という面があります。それは、人間がしゃべる自然言語をかみ砕いて、細分化します。コンピューターに理解させるために、プログラミング言語を操ります。最終的に人間が期待する動作をコンピューターにしてもらいます。人間とコンピュータの橋渡しをしているのがプログラマーの役割の一つです。CoderDojoに来ている子ども達は、自分の気持ちをコンピューターを使って表現するためにプログラミングをしています。コンピューターの操り方を覚えているという段階です。次の段階として、自分のため以外として、誰かの希望を形にしたり、誰かを助けるために作るという視点も持てるようになってくれたらいいと思います。

自己紹介に書きましたように、私は、近隣のCoderDojoに参加しています。

第1、第2、第3土曜日。第2、第3、第4日曜日とほとんどの週末にCoderDojoをやっています。つまらなければ、義務感だけでは、こんなにも続かないでしょう。この記事を書くにあたり、考えてみました。こんなにも子ども達と接する機会が多いのだから、私の人生や生き方に何か影響を与えているだろうと。ふと思い当ったのは、環境についてです。私がプログラミングを始めた頃は、周りでコンピューターを扱っている人などほとんどおらず、同じ高校生では皆無、学校の先生ですら全然知らないという状況でした。コンピューターやプログラミングのことを同世代で共通の世界として共有できる環境がありませんでした。しかし、今の子ども達には、CoderDojoという場があり、Scratch という便利なツールを使い、プログラミングのコミュニティーを形成しています。その世界に私も一緒に混ぜてもらえていることが楽しいので、あの当時に味わいたかった楽しさを今満喫しているのではないか、と思いました。

これからもこのCoderDojoというプログラミングのコミュニティーをいろいろな人にとって楽しい場となれるよう関わっていきたいと思っています。

この記事を書いた人

1997年5月生まれ

学習院大学文学部教育学科

株式会社Innovation Power

代表取締役

一般社団法人 CoderDojo Japan

理事

CoderDojo Kashiwa Champion

宮島
みやじま
衣瑛
きりえ
プロフィール

2013年5月から地元である千葉県柏市で小中学生向けのプログラミング道場、CoderDojo Kashiwaを主催・運営。プログラミング教育を始めとするICT教育全般について、全国各地で実践研究を行っている。教育分野のR&D(研究開発)を行っている株式会社 Innovation Power のCEO。2017年4月より柏市教育委員会とプログラミング教育に関するプロジェクトをスタート。市内すべての小学校で実施するプログラミング学習のカリキュラム作成やフォローアップを担当。2017年11月より一般社団法人CoderDojo Japan理事。大学では教育についてより専門的に学んでいる。

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